春の訪れとともに美味 「針魚」

コラム
2023年03月08日

海の貴婦人

細身で流線形のサヨリは群れを組み、水面下を矢のように走る。その有様はなかなかの見もので、一度見たらサヨリのファンになること疑いない。流麗な姿と、脂肪が少なく淡白な味と身の美しさ、そしてその動き、三拍子揃ったサヨリは魚介の麗人美人とほめはやされている。銀色のスマートな魚体を輝かせて海面を飛び跳ねるようになると、瀬戸内海にも春が訪れる。3〜5月が旬。

  • 命名 :一般に、「沢(岸辺)寄り」に多く集まる魚という意味から名付けられたとされている。
  • 地方名:日本に至る所に生息しているので呼び名も多彩
    • カンノンウオ(北九州)… カナノウオの音便語で糸のように細長い魚。
    • カマストシオ(岩手)…カマスを作るときに使う竹針を「カマス通し」と呼ぶ。
    • ヨロズ (兵庫)… 寄り集まる魚。
    • ヤマキリ(和歌山)…糸きり、網きりの意で、一度に大漁に取れて糸や網が切られるとの意味。
    • スズ(能登・淡路・徳島)…スズはササと同義語で細小(ササ)の意。
    • カンヌキ(東京)…両開きの扉の戸締まりに使う閂(カンヌキ)と相似の意で、サヨリの中でも120g以上の身付き脂のりの良いもの。
    • ハリヨ(新潟)…細長い体系、針魚。
    • エエクラ(島根)…余り泳ぎもせず群がり、遊んでいるように見えるため。
  • 形態 :20〜30㎝のスマートな延長形で、細長い下顎が特徴。この下顎の先端部は紅を刺したよう赤く、美しい色かどうかが鮮度のバロメーターにもなる。上顎は平らで、上から見ると三角形を呈しており、鱗がある。体色は、背部が銀青色で小さな鱗があり、体側、腹部は銀白色をしている。上からは海の青さ、下からは太陽光の白さにうまく溶け込み、外敵から身を守っているのである。
    • 漁期漁法…瀬戸内海では、初夏に孵化したサヨリの稚魚が、秋風の吹き始める9月に数万匹から数百匹単位の群れに別れ、瀬戸内海の沿岸にちっていく。この時期にサヨリはまだ10〜15㎝ほどの大きさで、「えんぴつ」などと呼ばれている。漁法は釣りや刺し網、たも網、2艘での網曳きなど。サヨリは表層を泳ぐので、網での漁は逃げられることが多く、サヨリ量は漁師泣かせの漁である。
  • サヨリのような女性:サヨリの外見は非常にスマートで、抜群のプロポーションの持ち主であるが、副構内の薄い膜が黒く、苦味がある。そんなところから、腹黒い女性のことを言う。

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