スッポンは栄養価が高いので、古くから強壮剤やコク級料理の材料として利用され、とくに血液は補欠剤として珍重されています。
すっぽんの養殖は、1879年(明治12年)に服部倉次郎(はっとりくらじろう)が東京で始めたのが最初です。その後、服部らは養殖場を静岡県舞阪(まいさか)町(現浜松市)に移して施設を次第に拡張し、現在の基礎を築きました。浜松市のスッポンは浜中湖で天然飼育されているもので、国内有数のスポン生産量を誇っています。
スッポンの養成池には露地池と温室いけとがあります。露地池の場合、スッポンは水温が15℃以下になると砂泥中に潜って冬眠し、15℃以上になるとふたたび活動し始めます。餌(えさ)は魚粉を主成分としたスッポン用配合飼料を与えることが多いです。餌をよく食べて成長するのは水温が25〜30℃になる時期で、日本では約4か月と短いのです。そのため700〜800㌘に成長させるのには4、5年を要する。
一方の温室池は近年、大分県内水面漁業試験場で研究され、養殖に成功した方法があります。温泉、温排水、ボイラーを利用して飼育水温を30℃以上に保つ方法で、12か月間の飼育で700〜800㌘に成長させることができます。この方式のスッポン養殖は各地に普及し、長崎、佐賀、大分県の年間水産量一時期急激に増え、1990年代中頃には100〜140トンに達したが、2000年代に入り徐々に減少、現在は30〜60トンで推移しています。スッポンの全国年間総生産量は約450トン(2000年調べ)食用の歴史は中国にはじまり、3000〜4000年といわれ、「鼈人(すっぽんじん)と呼ばれるすっぽんの調理人が存在していたといわれています。薬膳として皇帝に捧げられていたのです。中国ではスッポンを漢方薬として珍重しており、甲羅から地まであらゆる部分が薬用として活用されていたようです。
日本では縄文時代の遺跡、滋賀県「粟津貝塚」からすっぽんの骨が発見されたことによって縄文時代からすっぽんが食されてきたことがわかりました。すっぽんは腹持ちがよく、豊富な栄養に富みエネルギーを溜め込みやすいといわれています。不安定な食糧事情をもつ縄文人にとって、すっぽんは、重要な栄養食として重宝されたことでしょう。
「日本食品標準成分表」で他の食品と比較しますと、海のミルクといわれる「牡蠣」ですら、すっぽんにはかないません。他の食肉に比べてもスッポンはカルシウムで90〜200倍、リンや鉄では3倍l皿に他の食肉ではスッポンのように全体の栄養素がバランスよく含まれていないことが分かります。まさにスッポンは、人体で不足しがちな栄養素がバランスよく総合的に含まれているのです。
さらに、すっぽんは、食品として数千年の長い歴史を持っており、その安全性と実績が裏付されているため、安心して食することができる優れた食品といえます。記録では楊貴妃などの宮中料理として愛用されていたようです。