伝統の味

コラム
2022年10月26日

意外!鍋の歴史は200年

通常、私たちが鍋ものと呼ぶのは、卓上で鍋をに火かけ、調理しながら食べる料理のこと。いかにも煮物料理の原点といった料理です。世界には中国の「火鍋(フォクオ)」「砂鍋(シャークオ)」使ったさまざまな鍋料理、韓国のチゲ鍋、スイスのフォンデュ、フランスのフィやベースなど鍋物と呼ばれるものがあります。

鍋物はいかにも古くからあった伝統料理のようですが、実は鍋ものが料理として確立されてから、わずか200年余りしかたっていません。おでんやすき焼き、ちり鍋などが広く普及し始めるのは、江戸も末期にさしかかる頃のこと。

鍋を食卓に出すのはタブー?

日本に鍋の原型「鼎( かなえ)」を伝えた中国では、鼎を王室の礼器として使っていたほどです。

鍋は最も、基本的な炊事具であり、古来神聖なものとされてきて鍋を直箸で汚すなどもってのほかでした。

日本の正式料理は、ひとつひとつ皿に分けられ、身分や地位によって、また家庭でも主人と他のものとでは、皿数や盛り方が異なり、食事の場や時間さえ別でした。ですが、出来立てを熱いうちに食べる=美味、という何より魅力が制度や習慣を超え、広まり始めるのにそう時間はかかりませんでした。

170年代後半から1800年代前半にかけての料理書には湯豆腐、鶏鍋、シャモ鍋といった鍋物が次々と登場してきます。やがて南蛮より尻尾の鍋を囲む楽しみが浸透したことから、鍋物は大ブームを呼んだと言われています。

鍋もブームは「囲炉裏」文化

実は日本にはこの食事形式を受け入れる大きな土壌がありました。古くから農村で行われていた「囲炉裏」での食事です。

囲炉裏は壁穴式住居の後にも見られるほど、古い歴史を持つもの。囲炉裏のない町屋で、鍋を神聖なものとして崇めていた時代にも農村ではずっと、囲炉裏を囲む食事が続けられてきました。卓上で調理する、直箸でつつく。といった定義からは外れているものの、、鍋物の最も大きな特徴である「皆で囲む」食事形式は、まさに囲炉裏での食事そのものl鍋物の本当の原点は、この「囲炉裏」での食事にあるのかもしれません。

やがて江戸の「鍋物の流行」と農村の「囲炉裏での食習慣」が交差して、日本は鍋物大国になっていくのです。

地方で季節ごとに手に入るありあわせの材料を使って作っていたごった煮は、街で始まった鍋物の流行より「郷土料理」と呼ばれるおくじ自慢の料理になりました。

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