「どこで買う」から「誰から買う」

コラム
2022年06月09日

私の知るある家具店で、最近こんなことがあった。
ある日、まだお買い上げいただいたことのない夫婦が来店した。なんでも相談があるとのこと。彼らが大変申し訳なさそうに言うには、友人に連れられてある大型店で家具を購入したが、品選びが不安なので聞いてほしいというものだった。

他店での買い物にていての相談も珍しいが、店主は真摯に対応し、彼らが選んだ商品は問題なく、価格も適正だったので、そう答えた。
すると数日後、その夫婦がまた来店した。次は何かと思えば、先の家具店で買ったものをキャンセルしてこの店で買いたいという。店主は困った。それでは他店から売り上げを奪い取るようになってしまうが、それはしたくない。
そこで「次回に何か買われるときに当店をご利用ください」とお願いしたが、どうしてもこの店で買いたいと言う。

結局、ダイニングテーブルセットをお買い求めいただくことになった。金額にして、34万円である。彼らのあまりにもの熱心さに店主は、なぜそこまでして当店でお求めいただいたのか尋ねてみた。そもそもこの店で一度も買い物をしたことのなかったお客さんである。
他店での買い物の相談に来たことも不思議だった。すると彼らはこう答えた。これまでも店には時々立ち寄っていた。そのたびに商品のことを熱心に説明してある店頭のPOPを読んでいた。そして「この店、なんかいいかんじ」と思っていたのだと。「この店なら相談に乗ってくれるかもしれない」と思ったのだそうだ。私は思う。この夫婦は店主らの手によるPOPから商売に対する店の姿勢を感じ取ったのだろう。そして相談での店主の対応でそれに確信を得た。

こういう事例に出会うたびつくづく思う。今は「誰から買うか」の時代なのである。

ご質問や各種お問い合わせはお問い合わせフォームか、お電話よりご連絡下さい。
お問い合わせは、原則2営業日以内にご回答差し上げております。