泣き虫魚 ホウボウ(魴鮄)

コラム
2023年02月08日

ほうぼう歩き回って餌を探す

昔から、祝い魚として赤い魚は欠かせない。代表選手のマダイから金目鯛、アマダイ、メバル、ホウボウなど、その多くが海底近くに棲む。深場に暮らすものほど鮮やかな赤色なのは、水中深くでは赤い光は届かず、体色の赤が保護色になるからだ。方々は、内湾の、水深600メートルくらいまでの砂泥質の海底に棲み、薄紫色を帯た朱色の体色が美しい。体は、海底生活に都合よくできている。胸元には、ヒレが進化した歩調が三対あり、その先端部に感触細胞があって、歩き回りながら好物のエビ、シャコ、カニなどを探り出す。いずれにしても、姿形、行動ともにユニークな魚である。

30センチ以上に成長すると顔つきでメス、オスの識別ができるという。正面から見て頬が厚く膨らんだのがオスで、スマートなのが雌。二次性徴の表れなのだそうだが、頑丈な骨格の四角頭は、お世辞にも美男美女には見えない。こんなホウボウに、造花の神は美しく、また機能的な胸びれを与えたのである。

海底に静止していると、畳まれて目立たないが、泳ぎ出すと、島が飛び立つ時のように胸ビレを扇型に広げて、緩やかに舞い上がる。胸ビレは大きく、鮮やかなコバルトブルーに縁取られたウグイス色で、派手な青色の模様がある。この模様は、胸ビレを広げた時に上向きになるので、威嚇に役立っているのだろうと考えられている。

ホウボウは、頭が固く、泣き声を出すので、「頭の骨が固くなるように」とか、「夜泣きをしないように」との願いを込めて、昔から赤ん坊の大食い初めや箸初めに用いられてきた。ホウボウを栄養価で見ると、白身の魚にしては4.2グラム(成分値)と脂質が多め。タンパク質もかなり豊富だ。ミネラル類についても、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどが割と多めに含まれている。身は繊細で美味。北陸地方では君魚と呼ばれ、君主の食前にのぼる美味な魚の意だ。

ホウボウは、大量で浜を賑わせることもない代わり、ずっと人々の暮らしに寄り添ってきた沿岸魚だ。海を大切にして、これからも仲良く共存していきたい。

ご質問や各種お問い合わせはお問い合わせフォームか、お電話よりご連絡下さい。
お問い合わせは、原則2営業日以内にご回答差し上げております。