万能魚 『目鯛』

コラム
2022年09月28日

お手頃価格の大型魚

九州地方で生まれたメダイの稚魚は、対馬暖流に乗って成長しながら日本海を北上していきます。

小さいうちは、表層を漂う流れ藻やクラゲなど下でプランクトンを食べていますが、大きくなるとそこから離れ、水深100m前後の深場の礁などへ定着します。この頃の主な餌はサルパ、ヒカリボヤ、イカ類、小魚など中深層性の小型生物です。しかし、夜になると表層近くまで浮き上がって、くらげなども食べているようです。このように非常な貪欲家のせいか、生まれてから1年間の成長がとても早く、満1歳で30㎝になり、2歳で40㎝、3歳では50㎝にもなります。

対馬暖流に乗った旅は、北海道まで続きますが、深場へ移った後は反転して生まれ故郷の南の海へと成長しながら南下を始めます。身体はやや細長く、偏屈する。体色は黒っぽい。若魚では延滞に青みが勝っているが、老成魚では赤味を帯びるものがある。頭部がやや出っ張った形状をしている。

メダイの名のとおり、目が大きく、光の少ない深海の生活に適応している。背ビレと臀ビレの基底は比較的長い。尾ビレは二叉する。エラブタにトゲはない体表からは大量の粘液が分泌され、ぬるぬるしている。

もともと太平洋側を中心に生息していると思われていましたが、最近は日本海側での漁獲量が増加していて、島根県でも隠岐を中心に2〜3歳のものを対象とした一本釣りが行われ、100トン前後が漁獲されるようになってきました。旬は秋から冬にかけてで、脂がのって身がしっかりしているメダイを刺身やカルパッチョ等、生で食すれば程よい歯ごたえと甘みがあってなかなか美味です。脂のないものでも、クセのない無い白身なのでフライやムニエル、照り焼き、蒸し物などで料理すれば柔らかな食感と後味を残さない上品な甘さを感じることができます。大型の魚なので歩留まりも良くきれいな白身ですし、また価格も手頃なので量が必要なときなど重宝される魚です。

時には不恰好な魚の方が食べるとみるとずっと美味しかったりします。メダイも御多分に漏れず、見た目とは裏腹に実に味わい深い魚で、脂の乗った身はマグロのトロにも勝るほどです。それでいて白身の上品な味わいと食感を兼ね備え刺身、焼物、煮付けと、どのように料理しても重宝される魚です。

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