
鱈は北半球の寒帯に広く分布し、日本では東北・北海道で獲れます。体長1m以上になる魚で食欲がとても旺盛で、いつもお腹が膨れていることから「タラフク(鱈腹)」という言葉もできました。
鱈には外海を回遊する『沖鱈』と、岩場に住みつく『根鱈』がいます。普段は深海にいるので沖合の底引き網で漁獲しますが、冬に産卵のため浅瀬にくるところを差し網や延網でも獲ります。水分が多く身が柔らかいので、淡塩で身を締めて塩鱈としても流通しています。
スケソウダラはやや小型で北太平洋に分布します。日本では北海道、三陸沖、日本海側の佐渡などで漁獲されます。70年代は北洋漁業の中心で日本全体の漁獲量3分の1を占めるほどでしたが、近年は日本近海ではほとんど獲れなくなり、沖合の漁業では200海里の規制で漁獲が激減しました。
鱈はそのほとんどが重要な水産資源とされます。身は脂肪が少なく、柔らかな白身で、多岐にわたる料理で利用されています。具体的には、鱈鍋、干物(棒鱈)、フィッシュアンドチップスのような揚げ物、塩蔵品のバカラオ、かまぼこや魚肉ソーセージなどの練製品に加工されます。肝臓からは肝油が採取され、オイル漬けのコッドレバーは缶詰にされることもあります。さらに、スケトウダラの卵巣(たらこ)、マダラの精巣(白子)、胃(チャンジャ)、舌(ムニエル)なども様々な料理の材料として用いられます。
栄養面では、鱈はタンパク質やビタミンA(レチノール)、ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン)、ビタミンD、ビタミンE、さまざまなミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、リン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素)を含んでいます。マダラは特に低脂肪で、100g当たりの脂質は0.2g、飽和脂肪酸は0.03g、一価不飽和脂肪酸は0.03g、多価不飽和脂肪酸は0.07gと、魚類の中でも脂質が非常に少ないです。この低脂肪性は消化吸収を助け、高齢者や病後の体力回復食として、また低カロリーでダイエット中の方にも適しているため、病院食などにも広く用いられています。