昔は庶民の味 今では超高級?蝦蛄

コラム
2023年04月12日

シャコはハイテク生き物?

【命名】 江戸時代はシャクナギ(シャクナゲ)と言われていた。淡い灰褐色の殻を茹でると紫褐色に変わり、それがシャクナゲの花の色に似ていたところから付けられた名である。シャクナゲは石楠花、または石花と書き、シャクカがなまってシャコと呼ばれるようになった。

【時速80㎞のパンチ】 シャコはエビと同じ節足動物ながらも、シャコ科の名の通りれっきとした別の生き物で、日本近海では全長20㎝、海外では30㎝ほどに成長する。ハサミの代わりに腕のような捕脚(ほきゃく)と呼ばれる期間を持っているのが特徴だ。人間の腕に例えるなら、二の腕にあたる基部と、肘より先の指節に別れ、基部の内側には3本の可動棘(きょく)、指節には6本のトゲを持つ。

エビのハサミが前を向いているのに対し、シャコの捕脚は腕全体がハサミになったような構造で、内側を向いて開くのが大きな違いだ。シャコは砂地の海底に穴を掘って巣を作り、ほとんど外に出ないまま生活を送る。巣穴から顔をのぞかせ様子をうかがい、通りかかった餌を抱き抱えるように捕脚でとらえ、そのまま巣穴に引きずり込む。わずか1秒に満たないほどの早業で、自分ほどの魚も捕獲する。内側に棘を持つ強力な捕脚で捕まえられたら、魚は逃げ出す術もなく指先一つでダウン。強力なパンチも車庫の得意技で捕脚を降り出すように伸ばして相手を殴る。貝を割って食べることもあり、その速さは時速80㎞にも達する。プロボクサーのパンチが時速30〜50㎞程と言われているので、およそ2倍の速さだからまともにヒットしたらひとたまりもない。シャコは気性が荒く縄張り意識も強いため、近づくと誰彼構わず攻撃する習性がある。

【前後左右、いろいろ見えます】 さらに不思議なのは目で、トンボのように小さな目(個眼)が集まった複眼を持ち、上下2分割の構造で前後左右が同時に見えるハイテク仕様だ。しかも人間が識別できる色は赤、緑、青の三原色しかないのに対し、シャコは11〜12原色を見分けることができる。

さらには日焼けの原因となる紫外線や暖房効果のある赤外線まで見えるというから驚きだ。光は波を描きながら、ちょうど身をくねらせて歩くヘビのように進む。そのため大奥の動物は、正面からの光は左右に揺れているように見えるため直線偏光(へんこう)と呼ばれている。これに対し車庫の目は回転しながら進む光、円偏光(えんへんこう)も見分けることができるのだ。これは反射や水の揺れで変化する光を察知できるため、獲物を見つけやすくするための進化と考えられている。この技術はDVDやBlu-rayのような光学ドライブに応用可能で、次世代企画が生まれるかもしれないと期待が寄せられている。名付けてシャコ・プレイヤーが誕生する日が待ち遠しい。かつては豊漁だったシャコは、東京湾はおろか、漁獲量日本一の愛知県でも激減している。「江戸前」は東京湾で採れた魚介を意味する。江戸前ずしがなくならないよう、自然環境は大切に。

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