
夏の海の美しい青さに映えるトビウオが颯爽と飛び跳ねる姿が見られます。しかし、考えてみれば通常は水中の溶けた酸素でしか呼吸できない魚にとって、空中へ飛び出すことは大きな覚悟と決断が必要に思えます。海は多様な生物で満ちており、数ミクロンのプランクトンから数十メートルにも及ぶ鯨までが生息しています。これらの生物は食物連鎖を通じて生き残りをかけた戦いを繰り広げています。
トビウオも例外ではなく、小さな魚を支配できる一方で、油断すると大型魚に捕食される運命にあります。生き残るため、生物は敵を欺く、身を隠す、攻撃するなど多様な戦術を駆使します。「飛ぶ」という行動は、トビウオにとって最後の手段とも言える生存戦術かもしれません。イルカやマグロから追われた時には、空中へと華麗に飛び出します。その背は海の青に溶け込む青色で、鳥から見ても見つかりにくく、腹は白く、水中の大きな魚から見ても波しぶきに紛れてしまいます。そのため、見事に逃げ切ることができます。ダツやサヨリのように飛べる魚は他にもいますが、トビウオのように一度に500メートルも飛べる魚は他にはいません。
トビオウの産卵は夏から秋。全長35センチ。おもに延縄や刺し網で漁獲されます。古来、トビウオは塩焼き、すり味、竹輪、蒲鉾等で親しまれ きました。一飛び500メートル、水面からの高さ約7メートル、滞空時間42秒がギネス記録。飛び立つときの時速は約70キロ。黒潮に乗って日本近海に現れるトビウオ科の魚は約20種といわれています。トビウオの尾びれの下方は、上方に比べ著しく長く伸び、この尾びれを海面で激しく振って助走し、勢いをつけて空中に飛び出して、その後は胸びれと腹びれをひろげて、グライダーのように水面近くを飛行します。