キンメダイの「金目」はダテではなく、優れた遠近調整機能を備えています。タペータムと呼ばれる反射膜が網膜に存在し、一度入った光を再利用することができるため、深海においてもエサを目で確認して捕食できるのです。
深海では太陽光線の赤い色が吸収され、赤色は見えずにほとんど黒く見えると言われていますが、キンメダイはこの特殊な反射膜によって、深海でも周囲の環境を活用して生き抜いているのです。
また、キンメダイは驚くべき進化の歴史を持つ「古代魚」でもあります。イワシですら約2000年前に出現したのに対し、キンメダイは1億年前に存在していたと言われています。人間との出会いは1830年代にモロッコ沖で発見されたのが始まりで、日本での漁獲は明治時代になってからで、戦後に一般的に食べられるようになったのです。
キンメダイは旬が12月から3月とされています。この時期になると、特に美味しさが際立ちます。目利きのポイントは、金色に輝く目と澄んだ白目、赤く鮮やかな皮と金色に輝くウロコ、身がピンと張っていることがポイントです。
関東地方では、伊豆でとれる「地きんめ」が鮮度がよくて最高です。この東伊豆産のキンメダイは大きく、色もより濃い赤をしているとのこと。刺身にすると、脂が身の中まで均等にふくまれてとろっと甘く、上品な味わいになります。また、この脂が煮魚にすると煮汁全体をからめるように溶け出してくるので、非常に美味しくなります。身はほろっとした白身でありながら濃厚な旨味を持っているのが特徴で、しゃぶしゃぶにしても絶品です。
キンメダイは美味しさだけでなく、その進化の歴史と生態も興味深い魚ですね。旬の時期にぜひ味わってみてください。